小論文勉強法:小論文で勝つ!“構成メモ”を作るには?

今回は、小論文入試における「構成メモ」の取り方について書いていきます。

 「構成メモ」とは、小論文を書くにあたっての骨組みとなるメモのことです。基本的に「草稿用紙」などが入試本番で与えられますので、それにメモを書いていくことになります
 なぜ構成メモを書くかと言うと、メモの取り方次第で、答案の出来不出来が大きく左右されると考えるからです。家などの建物を建てるときにも設計図は必要です。小論文における構成メモは、建物における「設計図」だと考えてください。
当然、構成メモを書かずにいきなり答案を書き始めるのはダメです。それはなんの方向性もなしに建物を建てようとするものです。途中で論理が破綻するか、書くことがなくなって、尻切れトンボで終わるのがオチです。
では、どのようにして構成メモを書くのか。まず、時間にして、制限時間の三分の一は構成メモに割いて大丈夫だと考えています。たとえば60分の制限時間であれば20分を構成メモに使います。残りの時間で答案が書けるのか不安になるかもしれません。ですが、構成メモさえしっかりしていれば、自然と答案は書けます。設計図ができているわけですから。
では、具体的に考えていきましょう。例題で考えていきます。

例題
「あなたの科学への思いについて述べなさい」(400字)

(’16日本大学松戸歯学部A方式第1期)

簡単そう…。そう思った方もいるかと思います。ですが、油断は禁物です。ここでどのように構成メモを取るかで、答案の完成度は変わってきます。では、まず構成メモのNG例を示します。

メモだからこんなものでは?と思うかもしれませんが、これでは厳しいです。理由は以下の通りです。

  1. すべて文章になっている
  2. メモだけで一つの答案になっており、そこから発展できなくなっている
  3. このメモでは合格答案に値するかの検討はなされていない

このメモだけで答案を書き始めると、最後の方で何を書いたらいいのかわからなくなってしまうでしょう。ですから、このメモではNGです。
では、私の考える適切な構成メモを、順を追ってご説明します。

 まず、問題文を分析します。私は、小論文においては、精密な解析と正確な読解が不可欠だと考えています。そうでなければ、出題者の意図と反した的外れな答案を書く恐れがあるからです。したがって、まずは問題文の解析と読解のメモをします。
 このときは、単純に、問題文の文節ごとにスラッシュを入れていけばいいです。本問では、「あなたの/科学への/思い/について/述べなさい」と切りました。これを分析すると、まずは「あなたの=解答者自身の」、「科学への」、「思い=考えていること」について書かなければならないことがわかります。また、「…について」とありますから、「あなたの科学への思い」が主題だとわかります。さらに、ここで問題となるのが、「科学」という言葉です。「科学」はいろいろな定義が考えられます。したがって、まずは自分自身が考える「科学の定義」をすることが必要だとわかります。これらの解析と読解を基に、さらにメモを作成していきます。

 問題になるのは「科学」という言葉の定義でした。したがって、そこが議論の出発点となります。画像は、私が実際に書いた構成メモです。まずは「科学」から思いつくワードやフレーズをそのまま矢印でつなげていきます。今回は「理科」、「数学」、「技術への応用」などが最初に出てきていますね。その後、思いついたものから、さらに発想できるものを書いていきます。「理科」や「数学」からは「数字が大事」であること、「技術への応用」からは「宇宙」、「医療」、「機械」が出てきました。「数字が大事」というところから、「数字=数値」だと発想ができます。そして、ここで大事なのが、反対概念を書いてみることです。この構成メモでは、「数値」の反対概念として「感情」を書いてみました。対比をすると、思考しやすくなります。「数値」は応用可能だが、「感情」はそうではない、という考えが出てきます。それは「再現性」がないからです。したがって、「科学は数値によって再現可能なものであるべき」という理由が導けます。また、先ほどの「技術への応用」は「具体例」として使えそうです。だんだん構成が見えてきました。

最後のメモです。答案の骨子を順番に書いていきます。

  1. 科学への定義への問題提起
  2. 「科学」とは?→数値で表すべきもの(主張)
    ∵定性的な感情だと再現不可だから(理由)
  3. 宇宙や医療の分野でミスは許されない(具体例)
  4. ∴科学は客観的であるべき(結論)

これにより、答案がうまくまとまると思います。メモを基に、これらに文章に肉付けをすればいいわけです。また、矢印や、「∴(よって)」などの記号を用いるのも、時間短縮に有効です。
では、解答例を示します。


「あなたの科学への思いについて述べなさい」(400字)

(’16日本大学松戸歯学部A方式第1期)

解答例

 「科学」は、技術的な応用の可能性を秘めたものである。では、「科学」とは何か。私の考えを述べる。
 「科学」は、数値などの客観的な数値により表されるべきものだ。なぜなら、数値などで表せないものは「主観的」なものであって、定量的に計測できない、定性的なものであるからだ。したがって、同じ環境下にあっても、データとして同じ結果を得ることができない。
 これでは、技術として応用できない。なぜなら、科学技術は、人工衛星など、寸分の狂いも許されない世界で用いられるからだ。これは医療でも同じことが言える。医療の世界においては、患者の健康のため、治療の精度や投薬量が厳密に決められている。ここに主観的な要素が多く入り込むと、医療ミスをはじめとした甚大な被害が発生し得る。
 以上から、私は、科学とは客観的なデータにより計測可能でなければならないと考える。さもなければ、実社会への応用ができない机上の空論となってしまうからだ。(400字)

小論文を書く際のメモを書く際の参考になれば幸いです♨

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この勉強法を紹介した人

1988年10月31日福岡市生まれ
福岡市立友泉中学校卒業
福岡県立修猷館高等学校入学
学年400人の中から次席の成績で卒業
早稲田大学法学部入学
法学部長である上村達男教授のゼミに所属し、会社法を専攻
大学卒業後、大手電機メーカー関連企業において製品規格立案業務に従事
仕事の傍ら、都内の学習支援ボランティアに参加
学習支援の中で、大学受験生の偏差値が3か月で10ポイント向上し、志望校合格を可能にする
教育を通して社会に貢献することを決意し、講師へと転身
都内に展開する大手予備校「早稲田アカデミー」、難関大学・医学部専門予備校「学び舎東京」、大手高校受験塾「栄光ゼミナール」にて勤務し、開成高校・筑波大学付属駒場高校などの最難関高校の生徒の大学受験指導を担当
福岡において複数の予備校を経験後、小論文専門予備校「小論ラボ」を創設
最大手予備校、医学部受験専門予備校「受験の微・積」において小論文指導を担当
現在に至る